公開講演会 「被災地に何をみるのか — 福島県浜通りの『観光』と『生活(ライフ)』」
藤川 輝穂 さん(社会学部現代文化学科3年次)
2014/10/29
研究活動と教授陣
OVERVIEW
立教大学ESD研究所、立教SFR重点領域プロジェクト研究主催 講演会
日時 | 2014年10月12日(日)13:30~16:30 |
会場 | 池袋キャンパス 太刀川記念館3階 多目的ホール |
講演者 | 里見 喜生 氏 【略歴】1968年福島県いわき市常磐湯本町生まれ。いわき湯本温泉で1695(元禄8)年から続く老舗旅館「古滝屋」16代目当主。2011年11月に、「NPO法人ふよう土2100」を設立、理事長就任。「100年後」(西暦2100年)を視野に入れた地域づくり・人づくりのために自分たちが「有機腐葉土となる」とのコンセプトで、被災者復興支援事業と、子育て・障害者支援事業を行っている。 金井 直子 氏 【略歴】1965年東京都生まれ。1996年に楢葉町に移住。東日本大震災と原発事故により自宅が警戒区域に指定され、現在はいわき市に避難。原発事故によって避難した住民らが、生活再建のために必要な完全賠償と原状回復を求めて提起した「福島原発避難者訴訟」に参加。2012年12月3日に提訴された本訴訟は、以降各地で提起される原発事故による避難者らの集団訴訟の皮切りとなった。現在、原告団事務局長を務めながら、視察ツアーの運営に携わる。 |
レポート
私たちは被災地に何を「見る」のでしょうか。ニュースで見聞きする震災後の福島県の状況。私たちはそれだけで被災地のことを「知った」つもりでいるのではないでしょうか。画面を通したものだけで本当の被災地・被災者の姿を知ることができるのでしょうか。
本講演会では、被災地に住んでいた方のお話を聞くことができ、震災後の浜通りについて捉える機会となりました。
最初は、いわき市で1695年から続く老舗旅館「古滝屋」を営み、またNPO法人「ふよう土2100」の理事長である里見喜生さんのお話を伺いました。里見さんは「観光業」からではなく、「未来づくり業」という新たな視点から被災者復興支援事業を行っています。「観光業を今後どのようにしていこう」という経済面のことではなく、「人間社会の理想」を考え、良い未来をつくるための活動をしているとのことでした。被災地を見たいという方を案内し、実際に現地を見て回るスタディーツアーの実施も里見さんの活動の一つです。参加された方は、メディアを通して見た姿とはまったく異なる被災地を目の当たりにして、何も言えなくなってしまうそうです。私たちはメディアを通して「知った」気分でいたり、復興について机上で議論しがちですが、それは意味のないことで、被災地を自分の目で見て、被災者の方に思いを馳せる、そこから始めなければ本当の復興にはたどり着かないと感じました。
本講演会では、被災地に住んでいた方のお話を聞くことができ、震災後の浜通りについて捉える機会となりました。
最初は、いわき市で1695年から続く老舗旅館「古滝屋」を営み、またNPO法人「ふよう土2100」の理事長である里見喜生さんのお話を伺いました。里見さんは「観光業」からではなく、「未来づくり業」という新たな視点から被災者復興支援事業を行っています。「観光業を今後どのようにしていこう」という経済面のことではなく、「人間社会の理想」を考え、良い未来をつくるための活動をしているとのことでした。被災地を見たいという方を案内し、実際に現地を見て回るスタディーツアーの実施も里見さんの活動の一つです。参加された方は、メディアを通して見た姿とはまったく異なる被災地を目の当たりにして、何も言えなくなってしまうそうです。私たちはメディアを通して「知った」気分でいたり、復興について机上で議論しがちですが、それは意味のないことで、被災地を自分の目で見て、被災者の方に思いを馳せる、そこから始めなければ本当の復興にはたどり着かないと感じました。
次に、「福島原発避難者訴訟」の原告団事務局長を務めている金井直子さんのお話がありました。金井さんは震災により警戒区域に指定された楢葉町に、それまで住んでいました(現在は避難指示解除準備区域)。金井さんのお話からは東京電力と政府に対する強い憤りを感じました。同じく警戒区域だった大熊町の写真も何枚か見せていただきましたが、誰も住んでいない住宅地、袋に入れたまま放置されている除染した土、草が伸びきってしまった庭など、震災から3年半経ったとは思えない、復興とは無縁の光景に愕然としました。政府から除染したと説明されたとしても、放射線量が心配で帰宅できないそうです。現在の状況が、被災者の方々をどれだけ不安にさせているのか、少しでも理解し、改善しようとする姿勢が政府には足りないと感じました。金井さんのお話からも、復興を考えるには、現状を「知る」ことがなければ何も始まらないのだと感じました。
最後は、講演者のお二人と社会学部の関礼子教授による討論で、震災に対して関心がある、または無関心な人について議論されました。国民全員が震災に関心があるというわけではないようです。無関心な人にアプローチすることは難しいことですが、現状を目の当たりにする人が増えることで、それが広がり、徐々に変わっていくのではないかということでした。また、復興と経済面の共存というテーマでは、観光で得られる経済効果は確かに復興の一つのプロセスと考えられていますが、利益を追求しない人々の助けや思いやりがあってこそ、復興が進むのだという話が印象に残りました。震災復興を考える際、第一に経済面から話を始めるのではなく、国民一人ひとりが「被災地のために何ができるのだろう」と考えるところから復興が始まるのだと改めて感じました。
私たちは被災地に何かを見ることができるのでしょうか。未来づくりのための被災者支援、未だ復興の兆しの見えない避難者の生活。当たり前であったことがいきなりなくなってしまった現状。私たちは今こそ本当の意味で被災地を「知る」ことが必要であり、それが復興を支援する第一歩であると、本講演会を通じて学びました。
(撮影:社会学部現代文化学科3年次 内藤 朱里)
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
私たちは被災地に何かを見ることができるのでしょうか。未来づくりのための被災者支援、未だ復興の兆しの見えない避難者の生活。当たり前であったことがいきなりなくなってしまった現状。私たちは今こそ本当の意味で被災地を「知る」ことが必要であり、それが復興を支援する第一歩であると、本講演会を通じて学びました。
(撮影:社会学部現代文化学科3年次 内藤 朱里)
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