消費行動の変化—2030年へ
経営学部 高岡 美佳教授
2022/03/08
研究活動と教授陣
OVERVIEW
今、消費行動はどこへ向かおうとしているのか。コロナ禍による変化。COP26が光を当てた2030年とその後のサステナビリティ(持続可能性)への流れ。より広いエシカルな観点からの消費者の参画。マーケティングやCSR(企業の社会的責任)を専門とする経営学部の高岡美佳先生に伺いました。
コロナ禍以前と以後
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、消費行動は大きく変わったといわれています。
家の中で消費を楽しむ「巣ごもり消費」が流行。その反面、アパレル、通勤通学、レストランでの食事などへの支出は縮小しました。
ポストコロナでは、これらの変化は元に戻るのでしょうか。リベンジ消費という言葉があるように、多くのものはある程度戻るでしょう。しかし、コロナ禍で新しく価値を見出した変化はそのまま根付くであろうことを忘れてはなりません。
通勤時間をなくすことで生産性を高めるリモートワーク、時間節約や選択肢拡大を可能にしたフードデリバリー、世界中で利用者が急増したネット通販。戻らない変化もあるのです。
家の中で消費を楽しむ「巣ごもり消費」が流行。その反面、アパレル、通勤通学、レストランでの食事などへの支出は縮小しました。
ポストコロナでは、これらの変化は元に戻るのでしょうか。リベンジ消費という言葉があるように、多くのものはある程度戻るでしょう。しかし、コロナ禍で新しく価値を見出した変化はそのまま根付くであろうことを忘れてはなりません。
通勤時間をなくすことで生産性を高めるリモートワーク、時間節約や選択肢拡大を可能にしたフードデリバリー、世界中で利用者が急増したネット通販。戻らない変化もあるのです。
底流はサステナビリティ
私たちはコロナ禍での動きだけに目を奪われていてはいけません。より根源的なサステナビリティを追求する底流が存在するからです。
2021年秋に開かれたCOP 26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、今世紀半ばのカーボンニュートラルに向けて2030年までに各国が野心的な気候変動対策を講じることが合意されました。日本も従来の温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げ、2013年度比46%とする新方針を打ち出しました。
世界が動けば国が動き、国が動けば企業も動き、それを受けて消費者の行動も大きく変わります。例えば、開発が進むEV車やFCV車など次世代自動車には、補助金だけでなく、将来的には高速道路料金が割り引かれることになるでしょう。住宅ではカーシェアリング付きの魅力的なマンションが多く発売され、さらには、アプリで目的地までの複数の移動手段を一元的に検索・予約・決済できるMaaS※1の開発スピードも上がります。この動きに呼応するように人々の消費行動も変化していきます。食品・日用品・家電・アパレル・化粧品などあらゆる分野においてです。
※1 MaaS(マース):Mobility as a Service
2030年およびその先に向けては、消費行動を語るキーワードは「サステナビリティ」になるのです。
2021年秋に開かれたCOP 26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、今世紀半ばのカーボンニュートラルに向けて2030年までに各国が野心的な気候変動対策を講じることが合意されました。日本も従来の温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げ、2013年度比46%とする新方針を打ち出しました。
世界が動けば国が動き、国が動けば企業も動き、それを受けて消費者の行動も大きく変わります。例えば、開発が進むEV車やFCV車など次世代自動車には、補助金だけでなく、将来的には高速道路料金が割り引かれることになるでしょう。住宅ではカーシェアリング付きの魅力的なマンションが多く発売され、さらには、アプリで目的地までの複数の移動手段を一元的に検索・予約・決済できるMaaS※1の開発スピードも上がります。この動きに呼応するように人々の消費行動も変化していきます。食品・日用品・家電・アパレル・化粧品などあらゆる分野においてです。
※1 MaaS(マース):Mobility as a Service
2030年およびその先に向けては、消費行動を語るキーワードは「サステナビリティ」になるのです。
エシカルに1票を投じる
サステナビリティを目指す世界で、消費者はどのように行動すべきでしょうか。
その点で注目されるのが、SDGs(持続可能な開発目標)の広がりに伴い高まりを見せている人権や環境などに配慮した「エシカル(倫理的)消費」です。自分の効用を最大化するのが消費行動の原則ですが、エシカル消費は他者のことも考える、ある意味で特徴的な消費行動だといえるでしょう。
そもそも消費とは、「自分が応援したいものに1票を投じる行為」と見なすことができます。つまり、消費者は、企業を変え、国を動かすという逆の流れも存在するのです。環境経営を行う企業、人権に真剣に向き合う企業、そのような企業の商品を皆さんが買うことによって世界は変わっていくでしょう。
その点で注目されるのが、SDGs(持続可能な開発目標)の広がりに伴い高まりを見せている人権や環境などに配慮した「エシカル(倫理的)消費」です。自分の効用を最大化するのが消費行動の原則ですが、エシカル消費は他者のことも考える、ある意味で特徴的な消費行動だといえるでしょう。
そもそも消費とは、「自分が応援したいものに1票を投じる行為」と見なすことができます。つまり、消費者は、企業を変え、国を動かすという逆の流れも存在するのです。環境経営を行う企業、人権に真剣に向き合う企業、そのような企業の商品を皆さんが買うことによって世界は変わっていくでしょう。
高岡教授の3つの視点
- ポストコロナ戻る変化・戻らぬ変化
- サステナビリティそれこそが根源的な潮流
- 消費とはエシカル応援の1票を投じる行為
※本記事は季刊「立教」259号(2022年2月発行)をもとに再構成したものです。バックナンバーの購入や定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点(2021年11月)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
高岡 美佳
東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。2002年立教大学経済学部助教授、09年より現職。専門分野は流通、マーケティング、CSRコミュニケーション論。(株)モスフードサービス、SGホールディングス(株)、共同印刷(株)の社外取締役や国土交通省官民物流標準化懇談会の構成員も務める。
高岡 美佳教授の研究者情報