大学での学びを糧に演じ続ける
女優 南沢 奈央さん
2017/03/01
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
女優として活躍されている南沢奈央さんに、お話を伺いました。
ピュアで聡明な存在感を放つ若手女優として活躍する南沢奈央さん。10代の時には高校生、20代になってからはさまざまな職業や人生を歩む女性と、幅広い役柄を演じている。また、テレビドラマや映画など映像作品だけでなく、昨年11月には鴻上尚史さん作・演出の舞台『サバイバーズ・ギルト&シェイム』に出演するなど、活動のフィールドを広げている。
その南沢さんに女優の道へ進む決意をさせたのも、舞台だった。中学3年生の夏、通学途中でスカウトされた。しかし、高校受験を控えた大切な時期。「それどころではない」と断ったという。
「そもそも芸能界にはまったく興味がなかったし、人前に立つなど目立つことはむしろ苦手だったのです」
高校に進学。一段落したこともあり、スカウトされた事務所主催の舞台を観に劇場に足を運んだ。黒木メイサさん主演の『あずみ~AZUMI Returns』。演者たちの迫真の演技に、これまで経験したことのない衝撃を受けた。
「舞台の上の役者さんたちから、人間が持つエネルギーやパワーが生々しく心に響いてきた。こんなすごい世界があるんだ、って感動しました」。そして、持ち前の好奇心から一歩を踏み出す。「声を掛けてもらえなければ絶対に飛び込まない世界。こんな機会はきっともうない。やってみようって」。
2006年、連続ドラマでデビュー。演じることは想像以上に難しかった。セリフに感情を込められず棒読みになってしまったり、役作りもちゃんとできなかったり。
「あまりに何もできなくて恥ずかしくなるほど。でも、もし次のチャンスがあるならこうしたい、こう変えたいという思いがどんどん強くなっていきました」。
もともと読書好きとあって、小説を読んで登場人物に気持ちを重ねるように演技を通じていろいろな人の立場で物事を考えることの面白さに魅せられていったという。
その南沢さんに女優の道へ進む決意をさせたのも、舞台だった。中学3年生の夏、通学途中でスカウトされた。しかし、高校受験を控えた大切な時期。「それどころではない」と断ったという。
「そもそも芸能界にはまったく興味がなかったし、人前に立つなど目立つことはむしろ苦手だったのです」
高校に進学。一段落したこともあり、スカウトされた事務所主催の舞台を観に劇場に足を運んだ。黒木メイサさん主演の『あずみ~AZUMI Returns』。演者たちの迫真の演技に、これまで経験したことのない衝撃を受けた。
「舞台の上の役者さんたちから、人間が持つエネルギーやパワーが生々しく心に響いてきた。こんなすごい世界があるんだ、って感動しました」。そして、持ち前の好奇心から一歩を踏み出す。「声を掛けてもらえなければ絶対に飛び込まない世界。こんな機会はきっともうない。やってみようって」。
2006年、連続ドラマでデビュー。演じることは想像以上に難しかった。セリフに感情を込められず棒読みになってしまったり、役作りもちゃんとできなかったり。
「あまりに何もできなくて恥ずかしくなるほど。でも、もし次のチャンスがあるならこうしたい、こう変えたいという思いがどんどん強くなっていきました」。
もともと読書好きとあって、小説を読んで登場人物に気持ちを重ねるように演技を通じていろいろな人の立場で物事を考えることの面白さに魅せられていったという。
ワークショップで監督、照明、小道具、編集……〝作品を作ること〟を多方面から学んだ
(左)2016年11〜12月、『サバイバー ズ・ギルト&シェイム』(紀伊國 屋ホール)にヒロイン役で出演 (右)学生時代最後の出演映画『マメシバ一郎 フーテンの 芝二郎』(2013年2月公開)。同シリーズの連続 TVドラマにも出演した
仕事と高校生活との両立は、しかし、たやすいものではなかった。多忙を極めた3年間。しかし、南沢さんは大学にも進みたいと考えていた。
「仕事は楽しくなってきたから続けたい。でも一方で、勉強したいという気持ちも同じぐらいあって。どちらかを諦めることはできませんでした」
進学先を探す中で見つけたのが、創設されて間もない立教大学の現代心理学部。身体と表現、映像と表現を学ぶ映像身体学科に「ビビビっ! ときました(笑)。私が一番興味のあることを学べる場所だ、と」。
さらに、南沢さんにとって立教は特別な存在だった。ご両親は立教大学の出身。大学で出会い、恋に落ちた。「学園祭を途中で抜け出してデートして……なんてノロケ話を聞かされ、んもう、いいなぁって(笑)。立教のことも父と母からたくさん聞いていたので、ずっと憧れていました」。
受験を乗り越え、入学。現代心理学部がある新座キャンパスは映画館さながらのロフト教室や作品製作ができる施設がそろい、座学だけでなく実践型のカリキュラムが充実している。グループでミュージックビデオを作るワークショップでは、監督、カメラ、照明や小道具、編集と、あらゆる役割を経験した。
「それまでの私は演じることでいっぱいいっぱいだったけれど、多くのスタッフがいるからこそ作品は生まれる、みんなで作っていると改めて気付かされました。そして、どう演じるかだけでなく、それをどう撮るかも重要なのだ、と。立教で学ばなければ知り得なかったと思います」
仕事との両立で忙しい日々も、季節の移ろいが感じられる自然豊かなキャンパスに来るとホッとひと息つけた。今も続く仲間との出会いにもあふれていた。濃密だった学生時代。でも、心残りが一つ。
「サークル活動をしたかった。落語研究会に入りたかったんです。それが残念」
「仕事は楽しくなってきたから続けたい。でも一方で、勉強したいという気持ちも同じぐらいあって。どちらかを諦めることはできませんでした」
進学先を探す中で見つけたのが、創設されて間もない立教大学の現代心理学部。身体と表現、映像と表現を学ぶ映像身体学科に「ビビビっ! ときました(笑)。私が一番興味のあることを学べる場所だ、と」。
さらに、南沢さんにとって立教は特別な存在だった。ご両親は立教大学の出身。大学で出会い、恋に落ちた。「学園祭を途中で抜け出してデートして……なんてノロケ話を聞かされ、んもう、いいなぁって(笑)。立教のことも父と母からたくさん聞いていたので、ずっと憧れていました」。
受験を乗り越え、入学。現代心理学部がある新座キャンパスは映画館さながらのロフト教室や作品製作ができる施設がそろい、座学だけでなく実践型のカリキュラムが充実している。グループでミュージックビデオを作るワークショップでは、監督、カメラ、照明や小道具、編集と、あらゆる役割を経験した。
「それまでの私は演じることでいっぱいいっぱいだったけれど、多くのスタッフがいるからこそ作品は生まれる、みんなで作っていると改めて気付かされました。そして、どう演じるかだけでなく、それをどう撮るかも重要なのだ、と。立教で学ばなければ知り得なかったと思います」
仕事との両立で忙しい日々も、季節の移ろいが感じられる自然豊かなキャンパスに来るとホッとひと息つけた。今も続く仲間との出会いにもあふれていた。濃密だった学生時代。でも、心残りが一つ。
「サークル活動をしたかった。落語研究会に入りたかったんです。それが残念」
女優という仕事の楽しさは 続けることで見えてくる
卒業し、いよいよ仕事1本でやっていくという自覚を持つとともに、意識が変わったという。「これまでは大学という勉強できる場があったけれど、これからは自分が知らないこと、知りたいことは自ら学ばなければ成長できない。もっと自分から行動していかなきゃ。そう思うようになりました」。
ナビゲーターを務める科学番組『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)は、まさに「学び」の場。理系科目は苦手だったが「知らない世界がこんなにたくさんあったんだと、とにかく楽しい」。
驚きの再会も。立教の同級生が番組のディレクターになっていたのだ。「仲間が活躍しているのがうれしくて、私ももっと頑張ろう! って」。
今挑戦してみたいことは、物語やエッセイを書くこと。実は以前から興味があったが、「私には無理」とどこか諦めていた。しかし、大学でシナリオの授業を受け、書いて表現することの楽しさを知り、自分でもできる、もっと書いてみたいと思うようになったという。そんな経験から、後輩たちにこうエールを送る。
「大学って自分ができないことや知らないことを勉強でき、自分の可能性に気付ける場所。そして大学時代しかそういう時間は持てない。好奇心を絶やさずにいろいろなことを学び、挑戦し、本当に自分が好きなこと、向いていることを発見していってほしい」
デビューから10年。今、そして、これから。南沢さんにはどんな風景が見えているのだろうか。
「何年後にこうなりたいという未来像は正直見えていないのですが、女優という仕事は、年齢によってできる役柄が変わるなど、続けていくことで楽しみを見つけていけるような気がして。だから、今の目標は『長く続けること』ですね」
そう語る南沢さんに最後の質問。一人の女性としての夢は?
「両親のように立教で運命の人との出会いがあるかもと期待していたのに、残念ながらなかったんです(笑)。実は卒業してからも父と一緒に池袋キャンパスの学食に行ったりと、うちは家族がとても仲良し。私もいつかはそんな家族を持てたらいいな」
ナビゲーターを務める科学番組『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)は、まさに「学び」の場。理系科目は苦手だったが「知らない世界がこんなにたくさんあったんだと、とにかく楽しい」。
驚きの再会も。立教の同級生が番組のディレクターになっていたのだ。「仲間が活躍しているのがうれしくて、私ももっと頑張ろう! って」。
今挑戦してみたいことは、物語やエッセイを書くこと。実は以前から興味があったが、「私には無理」とどこか諦めていた。しかし、大学でシナリオの授業を受け、書いて表現することの楽しさを知り、自分でもできる、もっと書いてみたいと思うようになったという。そんな経験から、後輩たちにこうエールを送る。
「大学って自分ができないことや知らないことを勉強でき、自分の可能性に気付ける場所。そして大学時代しかそういう時間は持てない。好奇心を絶やさずにいろいろなことを学び、挑戦し、本当に自分が好きなこと、向いていることを発見していってほしい」
デビューから10年。今、そして、これから。南沢さんにはどんな風景が見えているのだろうか。
「何年後にこうなりたいという未来像は正直見えていないのですが、女優という仕事は、年齢によってできる役柄が変わるなど、続けていくことで楽しみを見つけていけるような気がして。だから、今の目標は『長く続けること』ですね」
そう語る南沢さんに最後の質問。一人の女性としての夢は?
「両親のように立教で運命の人との出会いがあるかもと期待していたのに、残念ながらなかったんです(笑)。実は卒業してからも父と一緒に池袋キャンパスの学食に行ったりと、うちは家族がとても仲良し。私もいつかはそんな家族を持てたらいいな」
※本記事は季刊「立教」239号(2017年1月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
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プロフィール
PROFILE
南沢 奈央さん
2013年、立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。
2006年、高校1年在学中に連続ドラマ『恋する日曜日・ニュータイプ』(BS-TBS)で女優としてデビュー。
2009年、『赤い城 黒い砂』(京都南座、日生劇場)で初舞台。
2012年よりエコワングランプリPR大使。主演映画『HANA~ひとつ。』(市川徹監督)の公開が控える。テレビや映画、舞台、CM、ラジオなどで幅広く活躍中。
科学番組『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)のナビゲーターを大学4年次生の2012年4月から務めている。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。