公開シンポジウム「舞台におけるヴァーチャル」
INFORMATION
一般にはヴァーチャル・リアリティ(コンピューターによる仮想現実)という言葉によって知られる「ヴァーチャル the virtual」という概念は、哲学史においては現実の様態としての潜勢態を意味します。本シンポジウムは、こうした根源的な意味でのヴァーチャル概念を演劇やダンスの文脈に接続し、舞台(人が共に観る場所 theatron)においてどのような知覚・想像体験が起こるのかを理論的に、また実践的に探求します。
優れた舞台においては、しばしば不可思議な情動反応や魔術的なビジョンが体験されます。そこでは、明瞭な形や刺激として認知される手前のもの・未満のもの・以外のものが大きな役割を果たしていると考えられます。芸術体験に作用するこうした審級を仮に「ヴァーチャル(潜勢的)な次元」と呼びます。私たちはそれをいかにして学術的に論じ、芸術の実践に結びつけることができるでしょうか。またそれは狭義のヴァーチャル・リアリティや没入的な映像テクノロジーの体験と何らかの関係をもつのでしょうか。
心理芸術人文学研究所では、こうした問いを探求するために連続研究会を2年間にわたって開催し、哲学、映像研究、心理学など様々な分野の専門家を招いて討議を重ねてきました。この研究会の成果を広く学内外に届けるために、本シンポジウムを開催いたします。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
講師
本学現代心理学部心理学科教授
白井 述
本学現代心理学部映像身体学科教授
砂連尾 理
本学現代心理学部映像身体学科教授
田崎 英明
本学現代心理学部映像身体学科教授
松田 正隆
本学現代心理学部映像身体学科助教
宮川 麻理子
本学現代心理学部映像身体学科教授
横山 太郎
パネル
本学名誉教授
宇野 邦一
専門は、フランス文学・思想、映像身体論。『アルトー思考と身体』(白水社)、『ドゥルーズ 流動の哲学』『反歴史論』『非有機的生』(以上講談社)、『破局と渦の考察』(岩波書店)、『映像身体論』『吉本隆明 煉獄の作法』『土方巽 衰弱体の思想』(以上みすず書房)、ほか著書多数。
山形大学准教授
柿並 良佑 氏
専門は、ジャン=リュック・ナンシーを中心とするフランス哲学。共編著に『情動論への招待 感情と情動のフロンティア』(勁草書房)、Jean-Luc Nancy. Anastasis de la pensée, Editions Hermann、論文に「身振りの追憶 Transir, transition」「哲学の再描 デリダ/ナンシー、消え去る線を描いて」(以上『思想』)等多数。
東京藝術大学准教授、NPO法人芸術公社代表理事
相馬 千秋 氏
「フェスティバル/トーキョー」(2006–10)、世界演劇祭(フランクフルト、2023)等のプログラム・ディレクターを務めるなど、アートプロデューサーとしての業績多数。2019年フランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエ受章、2021年芸術選奨(芸術振興部門・新人賞)受賞。
慶應義塾大学教授
平田 栄一朗 氏
専門はドイツ演劇、パフォーマンス研究。著書に『ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者』『在と不在のパラドックス 日欧の現代演劇論』(以上三元社)、論文に "The Strange Name and Ambiguous Gestures of a Japanese Brechtian in the Social Combustion of Prewar Tokyo", The Brecht Yearbook, Vol. 45 等多数。
東京大学准教授
星野 太 氏
専門は美学、表象文化論。著書に『崇高の修辞学』(月曜社)、『美学のプラクティス』(水声社)、『崇高のリミナリティ』(フィルムアート社)、『食客論』(講談社)等。論文に「オラリティの感性論」「(非)人間化への抵抗 リオタールの「発展の形而上学」批判」(以上『現代思想』)等多数。
ワークショップ
俳優
生実 慧 氏
出演舞台にマレビトの会『長崎を上演する』(2013–16)、『福島を上演する』(2016–18)、捩子ぴじん『URBAN FOLK ENTERTAINMENT』(横浜赤レンガ倉庫、2015)、福井裕孝『マルチルーム』(小劇場楽園、2019)、ワワフラミンゴ『くも行き』(東京芸術劇場、2019)、松田正隆『シーサイドタウン』(ロームシアター京都、2021)等。その他、映画にも俳優として多数出演。
演出家、俳優
吉田 萌 氏
作・演出した舞台作品に『壁あるいは石、平たいメディウム』(元映画館、2020/2024)、『スティルライフ』(武蔵野美術大学鷹の台キャンパス旧ガラス工房、2022)。新作『ヴァカンス』(豊岡演劇祭、2024)は城崎国際アートセンター2024年度アーティスト・イン・レジデンス プログラムに採択。俳優としては関田育子『雁渡』(シアターグリーン、2023)ほか、三枚組絵シリーズ、マレビトの会等に参加。
劇作家、演出家、舞台俳優
我妻 直弥 氏
本学現代心理学研究科映像身体学専攻出身。主な出演舞台に関田育子『雁渡』(シアターグリーン、2023)、同『up roar』(劇場HOPE、2024)、作・演出・出演舞台に三枚組絵シリーズ『洋間たち』(元映画館、2023)、映像演出にThe スーパークール『軌道体』MV(2024)等。
詳細情報
名称
内容
かたちのてまえ──形象・身体・ダンスと/におけるヴァーチャル
・「身体原則の此岸」
柿並良佑氏
・「形象的なリズム」
星野太氏
・「言葉という潜在的ダンス──大野一雄の蔵書への書き込みより」
宮川麻理子
コメンテイター:宇野邦一
13:10~13:55 ワークショップⅠ
「母の死を上演する試み」
作・演出:松田正隆
出演:生実慧氏、吉田萌氏、我妻直弥氏
14:05–14:50 ワークショップⅡ
「視覚変換経験を通したダンスの実験ワークショップ」
砂連尾理、白井述
15:00~17:00 パネルⅡ
観ることの層──観客の経験におけるヴァーチャル
・「世界を二重化する装置としての劇場/演劇/XR」
相馬千秋氏
・「ドゥルーズとラカンの「ヴァーチャル」と演劇の経験」
平田栄一朗氏
・「私たちは能舞台に何を想像するのか──物語と修辞のあわい」
横山太郎
コメンテイター:田崎英明
対象者
申し込み
- 事前申し込み 不要
- 参加費 無料