公開講演会「欧州グリーン・ディールと日本」
INFORMATION
本公開講演会は、本学経済研究所プロジェクト研究「コロナ危機とEU統合の再検討」、及び立教SFR共同プロジェクト研究「欧州におけるEVシフトと生産・インフラ・ネットワークの再構築と日系企業への影響」の活動の一環として行われる。
2019年末、EUは2050年までにゼロエミッションを実現することを目指すと宣言し、新たに発足した欧州委員会は、これまで十分な成果を上げることのできなかったリスボン戦略、及びその後継の欧州2020戦略に代わる新たな産業政策としてEuropean Green Dealを進めようとしている。この動きは、フォン=デア=ライエン新欧州委員長の強い意向というニュアンスで報じられることが多い。しかし、EUのグリーン・ディールはにわかに始まったことではない。1993年のマーストリヒト条約には、環境や持続可能性(sustainability)が書き込まれ、1997年のアムステルダム条約では環境統合原則が導入され、2009年に発効した現行のリスボン条約においても、気候変動対策に貢献しうる措置が推奨されている。こうした長年にわたる政策の積み重ねのうえに打ち出されたのが、今回のグリーン・ディールである。加えて、欧州グリーン・ディールは、コロナ禍からの復興計画の中核に位置づけられ、EU共同債による資金的裏付けを得ている。
2019年には、EUと日本のあいだで、経済連携協定(EPA)および戦略的パートナーシップ(SPA)が締結された(後者は暫定)。EPAにより日本からEUへの自動車等の輸出は関税がゼロになるが、同時にSPAでは気候変動対策が最重要な協力項目と掲げられている。EUのグリーン・ディール政策は、日本の産業政策、環境・エネルギー政策にも大きな影響を与えていくことが予想される。
そこで、本公開講演会では、欧州のグリーン・ディ-ル、日EU経済関係、そして日本の再生可能エネルギーの現状とEUとの比較に焦点を定め、3人の専門家を招き公開講演会を開催する。
講演者
報告者
本学法学部非常勤講師、獨協大学経済学部非常勤講師、元外務省経済局国際経済課長補佐
明田 ゆかり 氏
2019年に発効した日EU・EPA交渉に、3年間、携わった実務経験を有する研究者。主な研究業績として、『規範政治とEU市民社会』(ナカニシヤ出版、2015年、共著)、『EUの国際政治-域内政治秩序と対外関係の動態』(慶應義塾大学出版会、2007年、共著)。
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長
飯田 哲也 氏
中央環境審議会、総合資源エネルギー調査会などの委員を歴任。21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21)理事、世界バイオエネルギー協会理事、世界風力エネルギー協会理事なども務める。一般社団法人全国ご当地エネルギー協会事務総長として、地域からのエネルギーシフトを進める活動を展開している。主な研究業績として、『「エネルギー計画2050」構想:脱原子力・脱酸素社会にむけて』(法政大学出版会、2019年、共著)、『エネルギー進化論-「第4の革命」が日本を変える』(ちくま新書、2011年、単著)、『エネルギー政策のイノベーション』(学芸出版社、2011年、単著)、『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論、2000年、単著)、他多数。
本学経済学部教授
蓮見 雄
司会・コーディネーター
神奈川大学経済学部助教
道満 治彦 氏
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)特任研究員。本学経済学部助教を経て現職。EUと日本の再生可能エネルギー政策の比較研究を行っている。主な研究業績として、「EUにおける再生可能エネルギーの「優先接続」の発達—2001年および2009年再生可能エネルギー指令における“Priority Access” “Priority Connection”の概念を巡って」(『日本EU学会年報』第39巻、2019年)、「日本における再生可能エネルギー事業発展にとっての壁—再生可能エネルギー特措法第5条の「優先接続」規定を巡って」(『比較経営研究』第43巻、2019年)。
詳細情報
名称
内容
「欧州グリーン・ディールと日EU・EPA」
蓮見 雄
「EU産業政策としての欧州グリーン・ディール」
飯田 哲也 氏
「加速する世界のエネルギーシフトと日本との落差」