「ちがい」を知り、「ちがい」を超え、「ちがい」の共生する社会へ ~複眼的思考を養う、多様性に満ちた学び~
異文化コミュニケーション学部開設10周年(前編)
2019/01/15
トピックス
OVERVIEW
グローバル化に伴い多文化化・多言語化が進む社会の中で真に活躍できる人物の育成を目指し、2008年に誕生した異文化コミュニケーション学部は、今年で開設10周年を迎えました。立教大学のグローバル化を牽引してきた特色ある学部教育と、拡充を進めている取り組みについてご紹介します。前編の今回は、学部の概要や在学生、卒業生メッセージをご紹介します。
多文化社会の諸相を理論的・実践的に理解する
異文化コミュニケーション学部 学部長 浜崎 桂子
全ての多様性を尊重し他者と他者をつなぐ
人やモノ、文化、情報が国境を越えて移動し、複雑化・多文化化するグローバル社会には、明確な解決策が存在しない多くの課題が山積しています。私たちが目指すのは、あらゆる多様性を尊重しながら他者と他者をつなぎ、多文化社会が抱える答えのない問題に向き合うことができる人物の育成です。
学部では、単に高い語学力やコミュニケーション力の養成を目標とするのではなく、「コミュニケーションは容易に成立するものではない」という認識に立つことから始めます。なぜコミュニケーションが成立しないのか。違いを生み出す文化や社会背景は何か。違いを認め合い、いかに他者と共に生きていくか。言語や文化とコミュニケーションの関わりを理論的に理解し、複眼的な思考を養いながら、こうした問いに対して考察を深めていくことが本学部の学びなのです。
卒業後の活躍の場は、国内外を問いません。国内において、自治体や学校、企業などあらゆる場にグローバル化の影響は及んでいます。そこに多様性があり解決すべき問題があるなら、どんな場であっても関わる人々や組織の間をつなぎ、学びを生かして貢献できると考えています。
学部では、単に高い語学力やコミュニケーション力の養成を目標とするのではなく、「コミュニケーションは容易に成立するものではない」という認識に立つことから始めます。なぜコミュニケーションが成立しないのか。違いを生み出す文化や社会背景は何か。違いを認め合い、いかに他者と共に生きていくか。言語や文化とコミュニケーションの関わりを理論的に理解し、複眼的な思考を養いながら、こうした問いに対して考察を深めていくことが本学部の学びなのです。
卒業後の活躍の場は、国内外を問いません。国内において、自治体や学校、企業などあらゆる場にグローバル化の影響は及んでいます。そこに多様性があり解決すべき問題があるなら、どんな場であっても関わる人々や組織の間をつなぎ、学びを生かして貢献できると考えています。
分野を横断し「実践力」を磨く多彩なプログラム
アメリカで1970年代に誕生した異文化コミュニケーション学は、極めて学際的な学問です。学部では4つの専門科目群を開設し、関心に応じて横断的に履修できるカリキュラムを用意。1年次から各領域への理解を深め、学びを効果的に組み立てるための科目を設けているのも特色です。
また、多様な文化をより深く理解するには、実際に現地で体験することが重要です。開設時より導入している全員必修の海外留学の拡充を図るとともに、2017年度には新たに「海外フィールドスタディ」を開講しました。これはアジアを中心とした国々へ赴き、文化人類学の手法を用いて文化や社会を観察・体験するプログラムです。
さらに、こうした現場で起こっている課題を解決し、国際社会に貢献できる力を養うため、近年は国際協力分野にも注力し、学びを充実させています。
一方、通訳・翻訳者や日本語・英語教員などの専門職の養成も、開設当初から力を入れてきた領域です。ここでも理論と実践の両方を重視し、通訳・翻訳を現場で体験する「立教コミュニティー翻訳通訳(RiCoLaS; Rikkyo Community Language Service)」や、豊島区在住の日本語を母語としない人々を対象とした「立教日本語教室」、近隣の中学校で学習支援を行うサービスラーニング科目を設けています。外国人住民の増加により多文化化が進む池袋を学びのフィールドに、現場での気付きを還元しながら実践力を磨いていきます。
また、多様な文化をより深く理解するには、実際に現地で体験することが重要です。開設時より導入している全員必修の海外留学の拡充を図るとともに、2017年度には新たに「海外フィールドスタディ」を開講しました。これはアジアを中心とした国々へ赴き、文化人類学の手法を用いて文化や社会を観察・体験するプログラムです。
さらに、こうした現場で起こっている課題を解決し、国際社会に貢献できる力を養うため、近年は国際協力分野にも注力し、学びを充実させています。
一方、通訳・翻訳者や日本語・英語教員などの専門職の養成も、開設当初から力を入れてきた領域です。ここでも理論と実践の両方を重視し、通訳・翻訳を現場で体験する「立教コミュニティー翻訳通訳(RiCoLaS; Rikkyo Community Language Service)」や、豊島区在住の日本語を母語としない人々を対象とした「立教日本語教室」、近隣の中学校で学習支援を行うサービスラーニング科目を設けています。外国人住民の増加により多文化化が進む池袋を学びのフィールドに、現場での気付きを還元しながら実践力を磨いていきます。
新たな試みを軌道に乗せていく
この10年間、学部では立教大学のグローバル化を牽引する特色ある教育を展開してきました。特に近年はさまざまな試みに着手しており、2016年度に開設した、専門科目を英語で学ぶコース「Dual Language Pathway(DLP)」などがあります。
今後は、こうした新たな試みをしっかりと軌道に乗せながら、より幅広い国・地域から留学生を受け入れ、学部の中でさらに多様な議論ができる場を構築していきたいと考えています。また、多彩な領域の研究者が集う学部として、立教大学から、アジアへ、世界へ、新しい異文化コミュニケーション学を発信していくことも目標の一つです。
これからも教育・研究を通して、国内外の多文化社会のより良い未来を創る人物を育成し、新しい時代の要請に応え続けていきたいと思っています。
今後は、こうした新たな試みをしっかりと軌道に乗せながら、より幅広い国・地域から留学生を受け入れ、学部の中でさらに多様な議論ができる場を構築していきたいと考えています。また、多彩な領域の研究者が集う学部として、立教大学から、アジアへ、世界へ、新しい異文化コミュニケーション学を発信していくことも目標の一つです。
これからも教育・研究を通して、国内外の多文化社会のより良い未来を創る人物を育成し、新しい時代の要請に応え続けていきたいと思っています。
VOICE
サービスラーニングB 言語研究関連科目群西池袋中学校の外国人生徒に対する学習支援:3年次 黄 蓉さん
文化や価値観の違いも踏まえてサポート
同じ中国語話者である中学生の力になりたいと思い、この科目を履修しました。日本と中国の学校は、教育の方法も日々の習慣も異なります。単なる通訳ではなく、生徒が文化や価値観の違いを受け入れて学校になじめるよう、悩みを聞きながらアドバイスを行いました。生徒や中学校の先生方とのコミュニケーションを通して、文化や立場が違う場合に「相手の話を聞き、相手の視点で考える」ことの大切さを学び、生徒と共に自分も成長できたように感じます。
同じ中国語話者である中学生の力になりたいと思い、この科目を履修しました。日本と中国の学校は、教育の方法も日々の習慣も異なります。単なる通訳ではなく、生徒が文化や価値観の違いを受け入れて学校になじめるよう、悩みを聞きながらアドバイスを行いました。生徒や中学校の先生方とのコミュニケーションを通して、文化や立場が違う場合に「相手の話を聞き、相手の視点で考える」ことの大切さを学び、生徒と共に自分も成長できたように感じます。
海外フィールドスタディB(スリランカ):3年次 千葉 祐平さん
元紛争地の現実と課題を肌で感じて
ルワンダ紛争に関心があり、元紛争地であるスリランカ北部での9日間の体験学習に参加。多くの人々にヒアリングを行い、被害者への人道支援や対立した民族間の関係修復に向けた取り組みを調べました。聞き取りを進める中で、事前学習で得た知識・情報とは異なる事実が明らかになり、自分の目で確かめ、多面的に事象を捉えることの重要性を実感しました。民族格差、経済格差などの課題が未だ残る現実にも触れた経験を、今後の紛争研究に生かしていきます。
ルワンダ紛争に関心があり、元紛争地であるスリランカ北部での9日間の体験学習に参加。多くの人々にヒアリングを行い、被害者への人道支援や対立した民族間の関係修復に向けた取り組みを調べました。聞き取りを進める中で、事前学習で得た知識・情報とは異なる事実が明らかになり、自分の目で確かめ、多面的に事象を捉えることの重要性を実感しました。民族格差、経済格差などの課題が未だ残る現実にも触れた経験を、今後の紛争研究に生かしていきます。
社会で活躍するOBOG
日本の中にも、たくさんの異文化がある:2016年卒業 IT勤務 石田 直也さん
海外に興味があり、世界の人々と円滑にコミュニケーションをとりたいと思い異文化コミュニケーション学部へ進学しました。在学中はボリビアへ留学したほか、世界50カ国、国内45都道府県を旅行。現在は、日本のキャッシュレス化を推進する仕事を行っています。学生時代に各地を巡った経験や現在の仕事を通して感じるのは、日本にも多様な異文化があるということ。異なる背景や価値観を持つ人と一緒に働く際は、学部で学んだ「違いを認める」という考え方が非常に生きています。
「チームで働く力」に国や人種は関係ない:2012年卒業 アパレル勤務 河原 郁穂さん
ユニクロUSAでエリアマネージャーを務め、店舗運営や人材育成に取り組んでいます。大学時代は「日本人とは何か」「人種とは何か」といったテーマに興味を持って学んでいましたが、現地スタッフと協働する中で、チーム形成に人種は関係ないと改めて感じます。互いのゴールを共有して相手に合った形で伝え、フォローすることが大切なのは、アメリカでも日本でも変わりません。これからも相手を理解することを心掛けながら、挑戦を続けていきたいと思います。
※本記事は季刊「立教」246号(2018年11月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
CATEGORY
このカテゴリの他の記事を見る
トピックス
2024/11/25
立教大学の英語名「St. Paul's」から「RIKKYO」...
写真で見る立教いま・むかし