クリスマスのクリブ
チャペルの豆知識
2017/11/27
キリスト教とチャペル
OVERVIEW
チャペルにまつわる豆知識をご紹介します。
飼い葉桶の幼子イエスとマリアとヨセフを囲んで
クリスマスが近づくと、チャペルにはキリスト降誕の情景を再現する人形が置かれます。これを英語で「クリブcrib」と呼びます。ラテン語の「飼い葉桶praesaepe」を語源とするイタリア語「プレゼピオpresepio」とも呼ばれます。
これは、キリストが厩(うまや)、すなわち家畜小屋で、最も貧しい者として生まれたことを思いめぐらしていたアシジの聖フランシスが、1223年のクリスマスにイタリア中部の町グレッチョで、飼い葉桶や敷き藁、雄牛やロバを用意させてミサに参加したことが起源だと伝えられています。そして現在でも、クリスマスを迎える備えの時「降臨節Advent」から、「降誕日Christmas Day」を祝い、1月6日の「顕現日Epiphany」まで、「クリブ」を置く習慣があります。世界各地の教会には、等身大の「クリブ」や、それ以上の大ジオラマのようなものもあります。また、家庭用の小さな「クリブ」も多くの品種があります。
諸聖徒礼拝堂(池袋チャペル)の「クリブ」は、世界に一つだけの特製品です。人形が収められた木箱には、「昭和三十一年度 立教中學校宗教部 獻納」とあり、制作者として、当時立教中学校(現立教池袋中学校・高等学校)の美術科講師であった、「淀井敏夫、小島弘」の名が記されています。
淀井敏夫(よどいとしお)氏は、1911年兵庫県朝来市に生まれ、2005年に逝去された東京藝術大学名誉教授。「心棒に石膏を直接つける技法で細く伸びるフォルムを構成し、独自の作風を示した」と評された彫刻家です。
小島弘(こじまひろむ)氏は、1922年大阪市生まれで、青山学院大学名誉教授。同大学正門のジョン・ウェスレー像も制作された彫刻家です。
これは、キリストが厩(うまや)、すなわち家畜小屋で、最も貧しい者として生まれたことを思いめぐらしていたアシジの聖フランシスが、1223年のクリスマスにイタリア中部の町グレッチョで、飼い葉桶や敷き藁、雄牛やロバを用意させてミサに参加したことが起源だと伝えられています。そして現在でも、クリスマスを迎える備えの時「降臨節Advent」から、「降誕日Christmas Day」を祝い、1月6日の「顕現日Epiphany」まで、「クリブ」を置く習慣があります。世界各地の教会には、等身大の「クリブ」や、それ以上の大ジオラマのようなものもあります。また、家庭用の小さな「クリブ」も多くの品種があります。
諸聖徒礼拝堂(池袋チャペル)の「クリブ」は、世界に一つだけの特製品です。人形が収められた木箱には、「昭和三十一年度 立教中學校宗教部 獻納」とあり、制作者として、当時立教中学校(現立教池袋中学校・高等学校)の美術科講師であった、「淀井敏夫、小島弘」の名が記されています。
淀井敏夫(よどいとしお)氏は、1911年兵庫県朝来市に生まれ、2005年に逝去された東京藝術大学名誉教授。「心棒に石膏を直接つける技法で細く伸びるフォルムを構成し、独自の作風を示した」と評された彫刻家です。
小島弘(こじまひろむ)氏は、1922年大阪市生まれで、青山学院大学名誉教授。同大学正門のジョン・ウェスレー像も制作された彫刻家です。
「三人の博士」こと、占星術の学者たち
私はかつて、諸聖徒礼拝堂「クリブ」制作(あるいは、その準備段階)の様子を見ていた、ある立教卒業生からこんな話を聞いたことがあります。
端正なキリンの彫刻を丁寧に作っていた生徒に、「こんなものだと、すぐに壊れてしまうんですネ」と評価せず、他の生徒が何となく作った、木の幹の塊のような不細工な作品を見て、「コレがイイんですネ!」と褒めた、それが「淀井先生」だったとのこと。確かに、諸聖徒礼拝堂「クリブ」の木彫りの像たちはとても頑丈です。経年によって欠けてしまったり、部品が取れるようなこともありません。
ところが、「淀井先生」の「幼いキリン」と題されたブロンズ像は、首を長く伸ばした端正な作品です。彼が評価しなかったタイプの彫刻が、ご自身の作風だったのでしょうか。そして、「コレがイイんです」と評価した作風は、小島弘氏の作品の数々に見られます。
私が聞いたある卒業生の談話は、不確かな部分もあるかもしれませんが、2人のプロの彫刻家が協同して、お互いの作風に敬意と信頼をもって、末永く設置できる「クリブ」を「獻納」(=献納)してくださったのだと思います。諸聖徒礼拝堂でしか見られない「クリブ」は、今もいつまでも、立教らしくクリスマスを祝い、キリスト降誕を深く黙想するシンボルです。
立教大学チャプレン 宮﨑 光
〔『チャペルニュース』第591号2016年11・12月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕
端正なキリンの彫刻を丁寧に作っていた生徒に、「こんなものだと、すぐに壊れてしまうんですネ」と評価せず、他の生徒が何となく作った、木の幹の塊のような不細工な作品を見て、「コレがイイんですネ!」と褒めた、それが「淀井先生」だったとのこと。確かに、諸聖徒礼拝堂「クリブ」の木彫りの像たちはとても頑丈です。経年によって欠けてしまったり、部品が取れるようなこともありません。
ところが、「淀井先生」の「幼いキリン」と題されたブロンズ像は、首を長く伸ばした端正な作品です。彼が評価しなかったタイプの彫刻が、ご自身の作風だったのでしょうか。そして、「コレがイイんです」と評価した作風は、小島弘氏の作品の数々に見られます。
私が聞いたある卒業生の談話は、不確かな部分もあるかもしれませんが、2人のプロの彫刻家が協同して、お互いの作風に敬意と信頼をもって、末永く設置できる「クリブ」を「獻納」(=献納)してくださったのだと思います。諸聖徒礼拝堂でしか見られない「クリブ」は、今もいつまでも、立教らしくクリスマスを祝い、キリスト降誕を深く黙想するシンボルです。
立教大学チャプレン 宮﨑 光
〔『チャペルニュース』第591号2016年11・12月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕
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