祭壇と装飾壁(池袋チャペル)

チャペルの豆知識

2014/01/01

キリスト教とチャペル

OVERVIEW

チャペルにまつわる豆知識をご紹介します。

諸聖徒礼拝堂(池袋チャペル)は、立教学院が築地から池袋校地に移転した1918(大正7)年9月から、約一年余を経た1920年1月25日(使徒聖パウロ回心日)に聖別されました。以来90年以上、チャペルの中心であり、祈る人々のまなざしの先に立つ「祭壇と装飾壁」について思いを寄せましょう。

『立教学院150年史資料集』収録のJ. A. ウェルボーン師による報告「東京の立教学院の礼拝堂聖別」(1920年9月)に、「礼拝堂は大学の他の建物と調和を保ち、煉瓦で堅固に造られ、石材で仕上げられています。(中略)祭壇と装飾壁は日本の純粋な白大理石で、赤い煉瓦壁および暗色仕上げの木材と強烈なコントラストをなしており、たちどころに目を引き寄せられます。」(*)とあります。建築当初、祭壇周辺の壁は、現在のように漆喰の白色壁ではなく、「赤い煉瓦壁」でした。このチャペルは、大学本館(モリス館)の両翼に、「メーザー記念図書館Mather Memorial Library」と並行して建てられ、「諸聖徒記念礼拝堂All Saints’ Memorial Chapel」と銘打たれました。その名が示すとおり、何人もの故人の記念としてささげられた寄付金によって、内部設備が整えられたのです。

そして、祭壇と装飾壁(alter & reredos)は別記の通り、若くして世を去った二人の子どもの記念として、彼らの両親から1917年にささげられました。ヘレンHelenは享年12歳。二つ年下の弟レジナルドReginaldは7歳でした。父ジョージ・ザブリスキGeorge Zabriskie, 1852-1931と、母サラSarah Forrest Gray,1863-1933の生没年は、米国聖公会ニューヨーク聖ヤコブ教会墓地の碑銘から判明しました。そして両親は、子どもたちの名を冠したHelen and Reginald Zabriskie Memorial Fund(ヘレン&レジナルド・ザブリスキ記念基金)を1922年に創設しています。また父ジョージは、1919年にデトロイトで開催された米国聖公会総会において、国債のキャンペーン推進側として、当時京都地方部のタッカー主教と協働した記録もあります。タッカー主教は1912年に立教を離れるまで、池袋校地取得に尽力した人です。

装飾壁左下にある真鍮の記念板

TO THE GLORY OF GOD
THIS REREDOS HAS BEEN GIVEN
IN LOVING MEMORY OF
HELEN ROMEYN ZABRISKIE
1893-1905
AND
REGINALD ZABRISKIE
1895-1902
BY THEIR PARENTS
1917
さてここからは想像の域を出ませんが、ザブリスキ夫妻が、娘と息子を記念して日本の友タッカーが構想中のチャペルに、祭壇と装飾壁をささげ、それを契機に米国の基金も創設されたとして、私たちの祈りを深めてゆくことも、許されるのではないかと思います。
 2013年の改修工事で、至聖所を区切る「コミュニオンレール」(かつてはここで陪餐/聖体拝領した柵)を取り外し、「祭壇と装飾壁」は、美しい全景が見渡せるようになりました。
 *『立教学院150年史資料集THE SPIRIT OF MISSIONS 立教関係記事集成<抄訳付>第4巻』199頁

立教大学チャプレン 宮崎 光


〔『チャペルニュース』第579号 2014年11・12月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕

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