立大馬術部の思いをつないでいく主将-始まりの90年

体育会PLAY UP

2018/04/09

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

数々の名誉を手にし、栄光に輝いた2016年度。2017年度、かつての主力たちが巣立った立大馬術部は、大きな転機を迎えていた。創部90年目に描いた軌跡。主将・遠藤は遠くを見つめ、その口を開いた。

振り向いて

先輩の武居杏奈(2017年3月卒業・右)と

 「あの時が一番楽しかった」。思いを巡らすのは2016年秋の学生馬術争覇戦。関東優勝に、全日本5位。黄金世代が成すチーム立大の中に、遠藤りさ(異4)はいた。国内トップクラスの実力を持ちながらも偉ぶることなく、仲間思いの先輩たち。彼らと眺めた表彰台からの景色は、その時3年次生で公式戦初出場だった遠藤の心に美しく刻まれた。

 尊敬する先輩たちの背中を見送った遠藤。主将となった彼女に残されたのは、あまりにも厳しい現実だった。初心者揃いの部員たちに、高齢の馬。試合会場の馬事公苑では2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて改修工事が始まり、慣れない環境での戦いを余儀なくされた。「かなうのならば、あの頃に戻りたい」。こらえきれない素直な思いが、ふと彼女の口をついた。

 それでも果たすべき、主将としての役割。実戦経験の少ない自分が、後輩に伝えられることは何だろう。自身への問いに答えを導いてくれたのは、先輩たちと過ごした日々だった。「サポートしてくれる他の部員にも感謝をすること」「自分よりも馬を優先すること」。技術面で教えられることは少なくとも、先輩が教えてくれたことを、きちんと伝えていくことは、大切な役割の一つだ。創部90年の伝統を受け継ぐ意志を持った〝つなぎ〟の主将、誕生の時であった。

影を追って

 2017年度に入り、5人の新入部員を迎えた。中でも経験者である青木海(済1)、中島佑(コ1)、山本修平(コ1)が台頭してきた。遠藤はそんな彼らに期待を寄せつつ、一つの夢を思い描いた。2016年に優勝した争覇戦で、再び結果を残す──。先輩が教えてくれたあの喜びを、今度は自分が後輩に教えたい。その一心から、彼女はひたすら部をまとめることに専念。「試合に出る時は一人でも、みんなの協力があって結果は残せるものだよ」。時として自己中心的になりがちな下級生たちに、「チーム」であることの重要性を示し続けた。

天性のセンスで成長が期待される青木(経1)

持ち前の落ち着きで障害を越える中島(コ1)

深い愛情を持って馬と接する山本(コ1)

 けれども、現実はそう甘いものではなかった。経験の浅い立大は、焦りもあってか争覇戦で最下位に。そして何より、愛馬の不調によって、遠藤は出場することすらかなわなかった。彼女を襲う無力感と喪失感。しかし、いまはただ前を向く。無邪気に馬術と向き合う後輩たちに、先輩たちの影を見たのだ。彼らがきっと、強い立大を蘇らせてくれるはず。そんな望みを託し、彼女はこの冬、部を後にする。

 主将として部員と向き合い続けた1年。振り向いてもそこにはいなくて、影を追っても届かない、大きすぎる先輩の存在に苦しみ続けた。だが、辛い時や迷った時、力をくれたのもまた、先輩の存在だった。忘れられない思い出を、力に変えるのも強さのうち。弱くも強い主将が〝つないだ〟思いは、これからも受け継がれることだろう。立大馬術部が100年目、110年目を迎えたその時、この90年目の答えが見つかる。そう信じている。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

アスリート&スポーツ

2024/09/18

復活した強きチーム
——夢を託された次世代の躍動

準硬式野球部

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。